あのDerek Norrisをパドレスからトレード獲得しました!

と興奮気味に伝えても、古くからのコアなナショナルズファンでなければ伝わりませんね。あのDerek Norrisって、どのDerek Norrisなんだ、と。すみません。しかし、私にとっては大ニュース、しかも嬉しい大ニュースのため、今日(12月3日)の朝Twitterで知ってから一日中ニヤニヤしていたかもしれません。
では、あのDerek NorrisとはどのDerek Norrisかと言えば、このDerek Norrisです。そう、このブログがPhase 2に移行する転換点となったGio Gonzalezのトレードでナショナルズが放出した4人のプロスペクトのうちの1人でした。
2007年ドラフト4順目でナショナルズに入団(同期の1順目はRoss Detwiler、他にJordan Zimmermann、Steven Souzaなど)。高卒入団ながらほとんど足踏みすることなく着々とステップアップし、(そのオフにトレードされることになる)2011年には若干22歳にしてメジャーのスプリングトレーニングに招待され、開幕後はAAでプレー。非凡な選球眼とパワーのある「打てる捕手」としてプロスペクトとしての評価を上げ、BAの全体ランキングでは、2010年シーズン前には38位、2011年シーズン前でも72位という高い評価を受けていました。2011年の11月にはルール5ドラフトを前に40人ロースター入りを果たし、いよいよメジャーデビュー目前まで来ていました。
というタイミングで、アスレティックスにトレードされていきました。惜しまれながら、ではありましたが、当時はまさにWilson Ramosがナショナルズの正捕手としての地位を固めつつある時期に当たり、Norrisはブロックされる形になっていたので、まあ新天地で頑張ってくれれば、という感じもありました。(結果的には、Ramosが故障で長期離脱することが何度もあり、Norrisがいればなあと思ったこともありましたが)
移籍1年目の2012年6月にアスレティックスでメジャーデビュー。すぐにレギュラーとしてマスクを被るようになり、2014年にはなんとオールスターにも出場しました。が、そのオフにパドレスにトレードされると、打撃面で苦しみました。今季はさらに悪化し、125試合、458打席で.186/.255/.328。特に、36四球に対して139三振を喫しており、かつて高く評価された出塁率マシーンとしての面影は失われつつあります。
とはいえ、来季開幕時でもまだ28歳。特に今季は運に見放されていたというデータもあり、また投高打低のパドレスの本拠地から離れることで、いくらかは打撃成績をもどしてくると見込んでもいいと思います。来季、そしてFA前(年俸調停対象期間)最終年の2018年シーズンの2年間(少なくとも)、ナショナルズの正捕手として頑張ってくれることを心から応援しています。
とはいえ、守備面での評価は全く高くなく、長期的な捕手のレギュラーとして物足りません。そういう意味では、やはりPedro Severinoへのつなぎ役なのかもしれません。
いやー、しかし、あのトレードで放出した4人のプロスペクトのうちの2人(NorrisとA.J. Cole)までもがナショナルズに戻ってきてメジャーでプレーすることになるなんて、思いもよりませんでした。嬉しいなあ。
ちなみに、残る2人のうち、Brad Peacockはアストロズにトレードされ、今もアストロズで主にスイングマンとして投げています。もう1人、Tom Miloneはアスレティックス-ツインズでローテーション投手として129試合に先発し、通算44勝を記録しましたが、今季は不振でシーズン終了後にツインズからDFAされ、新天地を探している状況です。
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ナショナルズからパドレスに移籍したのは、ベネズエラ出身の19歳の先発右腕、Pedro Avila投手。今季はHagerstown(A)で20試合に先発し、3.48/1.33、93イニングで92の三振を奪っています。
まだまだどう育つか分からない若手投手であり、Norrisの対価としてはかなり安いという印象。まあ、今季の打撃成績ではパドレスとしてはノンテンダーも考えたでしょうから、どんな対価でもゼロよりはいいという判断も成り立ちます。ナショナルズとしては底値(と信じたところ)で買うというギャンブル性の強い契約といえるかもしれません。
ウィンターミーティング中の12月7日、大型トレードがまとまりました。相手はホワイトソックス。ホワイトソックスとの間では、つい先日Chris Saleのトレードについて合意寸前まで行った(結局はレッドソックスに奪われていました)のですが、その下交渉を踏まえてのことでしょう、外野手のAdam Eatonを獲得し、Lucas Giolito、Reynaldo Lopez, Dane Dunningの3投手を対価として放出することでまとまりました。

まずは獲得したAdam Eatonについて。

Adam Eaton (2016 for White Sox) 
157G 706PA 14HR 63BB 115K .284/.362/428 14SB

左投げ左打ちの28歳の外野手。キャリア5年間の打撃成績は.284/.357/.414と、上位を任せられます。メジャーデビューしたころはパワーはありませんでしたが、直近は2年連続で14本塁打を放つなど長打力もついてきており、通算54盗塁とまずまず足もあります。今季はもっぱらライトを守りましたが、本来はセンター。守備力(特に肩)は高い評価を受けており、センターのレギュラーとして期待されます。

元々は、2010年のドラフト19順目でDバックスに入団。軽く3割を超える打撃成績を続けて、2012年のセプテンバーコールアップで早々とメジャーデビュー。翌2013年は故障で出遅れましたが、7月以降はレギュラーに定着。そのオフ、エンゼルスも巻き込む大型トレードでホワイトソックスに移籍すると、以降はリードオフとしてキャリアを積み重ねています。

上に書いたの数字だけを見るとそこまでいい選手のようには見えないかもしれません。オールスター選出もなければ、個人タイトルもありません。が、実は高い評価を受けています。打撃、守備、走塁の貢献をすべて加味したFangraphsのWARでは、今季6.0(平均的な選手と比べて1人でチームの6勝に貢献したという意味)を記録し、これはMLBの全野手で11位という好成績。しかも、この数字を3シーズン続けて伸ばしています。ちなみに、ナショナルズの選手ではDaniel Murphyの5.5(17位)が最高でした。もっと言えば、パイレーツからの獲得に向けて交渉しているとの情報が流れていたAndrew McCutchenに至っては、直近3年続けて低下させ、今季は0.8でした。

Eatonが魅力的なもう1つのポイントは経済面。年俸調停対象1年目となった2015年のシーズン前にホワイトソックスとの間で5年契約を結んでおり、このうち2017年から2019年までの3年総額1840万ドルという主力選手としては格安な契約をナショナルズは引き継ぎます。さらに2020年950万ドル、2021年1050万ドルという、今の活躍を続けていれば当然行使されるであろう球団オプションも付いています。こういう契約で主力選手を抱えることができると他の補強に資金を回すことができ、チーム力のアップにつながることが期待されます。

これから少なくとも3年間、あるいは5年間、チームのセンターを守って、打撃でも貢献してくれることを期待していい選手です。

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当然、これだけの選手を獲得するには高い代償を支払うことになりました。先日記事にしたBaseball Prospectusのランキングでは、Lucas Giolitoが2位、Renaldo Lopezが3位、Dane Dunningでも7位。主なプロスペクトをごっそり差し出すことになりました。

GiolitoとLopezの経歴については今更言うまでもないと思います。Giolitoの株はプロスペクトとしての評価が最も高かった今年の夏からするとかなり下がっており、低値で売ることになったという印象は否めません。もっとも、今季のメジャーでのピッチングを見せられるとそこまで期待感を持てないという印象が残っていますので、そこまで惜しい気がしません。是非ともこの私の印象を裏切る大投手になってください。個人的にはLopezのほうが惜しいですね。100マイル近い速球にキレのあるチェンジアップで三振の山を築くことができ、ファンがわくわくするピッチングができる投手でしたから。それにしてもマイナーをほぼ同じペースで上がってきたGiolitoとLopezの2人。ここでもそろってトレードされることになりました。

そして3人目のDane Dunningは今年のドラフト1順目29位(ナショナルズにとっては2人目の指名)で入団したばかりの右腕投手。Prospect Profilesの記事を準備していましたが、ボツですね。。。カレッジワールドシリーズが終わってからの契約でしたが、New York Penn League(SS)の打者を圧倒して評価を上げていました。アジア系の顔付きということもあって気にかけていたので、少し寂しいですが、これからの成長を遠くから見守っていきたいです(元々かなり遠くからでしたが)。

プロスペクトランキング1位のVictor Roblesを守り切ったことは評価していいと思います。投手の上位プロスペクトがごっそりいなくなった(先日のBPのトップ10では5位のErick Feddeしか残っていません)のはかなり心配ですが、即戦力ならA.J. ColeとAustin Vothが残っているし、若手なら、Tyler Watsonをはじめとする近年の高卒組が控えています。

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以上を踏まえると、高くはつきましたが、許容範囲のトレードだと思います。4人の選手がそれぞれに力を発揮し、両チームに貢献するWin-Winのトレードになることを願っています。

11/3 Wilson Ramos, Stephen Drew, Chris Heisey, Mark Melancon, Yusmeiro Petit, Matt Belisle, Marc Rzepczynski, Matt Latos, Sean Burnettの9選手がFA退団
11/11 Chris Heiseyと再契約
11/18 Austin Voth, Raudy Read, Rafael Bautista, Jose Marmolejos, Matt Skoleの5選手が40人ロースター入り
11/20-21 Brandon Snyder等とマイナー契約
11/23 Jimmy Corderoをトレード獲得

● 9選手がFA退団
ワールドシリーズが終わり(ちなみにカブスが107年ぶりの優勝)、以下の9選手がFA退団することになりました。

Wilson Ramos, C
Stephen Drew, INF
Chris Heisey, OF
Mark Melancon, RHP
Yusmeiro Petit, RHP
Matt Belisle, LHP
Marc Rzepczynski, LHP
Matt Latos, RHP
Sean Burnett, LHP

Petitには300万ドルの来季契約オプションがありましたが、球団は50万ドルを支払い却下することを選択しました。一方で、Gio Gonzalezの1200万ドルのオプションは行使しています。Gioについてはそれだけの価値はないという意見も散見されましたが、私としては順当だと思います。

この後、11月8日の期限までにQualifying Offer(約1700万ドルでの来季契約オファー。球団から提示されたこのオファーを選手が拒否した上でその選手が他球団とFA契約を結ぶことにより、来年6月のドラフトで補償指名権を得られることになるもの)を提示するかどうかを球団が判断することになります。シーズン途中で移籍してきたためQO制度の対象外となるMelanconを除くと、成績の上で検討に値するのはRamosだけですが、可能性はかなり低いでしょう。レギュラーシーズン終了直前に負傷してさえいなければ、間違いなくQOを提示していたでしょうが。
(追記:やはり、RamosへのQOはしませんでした。)

● Chris Heiseyと1年契約
FAになったばかりのChris Heiseyと再契約しました。1年140万ドル+インセンティブ。2016年の成績は.216/.290/.446というものでしたが、レギュラーシーズンで9本塁打、そしてNLDS第5戦での2ランを始めとする印象的な代打ホームランもあり、代打の切り札として貢献しました。まだ31歳。ベンチバットとしてはいい選手だと思います。

● Austin Voth, Raudy Read, Rafael Bautista, Jose Marmolejos-Diaz, Matt Skoleの5選手が40人ロースター入り
今年もこの季節です。11月18日、12月のルール5ドラフトに向けて以下の5人のプロスペクトを40人ロースターに入れました。なお、5人というのは最近にない多さ。なんとなく嬉しいです。

Austin Voth, RHP
Raudy Read, C
Rafael Bautista, OF
Jose Marmolejos, 1B
Matt Skole, 1B/3B

Austin Vothは2013年ドラフト5順目の24歳。軟投派ながら先発右腕として結果を残し、順調にステップアップ。今季はSyracuse(AAA)で投げ、セプテンバーコールアップの候補でしたが、声がかかりませんでした。アリゾナ秋季リーグで結果を残し(4試合で打たれまくった後、3戦連続無失点)、ようやく認められました。おめでとう。

Raudy Readはドミニカ共和国出身の23歳の捕手。2013年に本土上陸を果たした後、着実にステップアップして今季はPotomac(A+)の正捕手として101試合に出場。元々守備は高い評価を受けていたが、今季は.262/.324/.415、9本塁打と打撃でもなかなかの成績。プロスペクトとしては無名で、AA以上でプレーしたことがない選手ですが、捕手はルール5で指名されやすいことから、今回の40人ロースター入りとなった模様です。

Rafael Bautistaもドミニカ共和国出身の23歳。今季はHarrisburg(AA)のセンターとして136試合に出場し、.282/.344/.341の打撃成績。なんといっても最大の魅力は今季の全マイナーリーガーでトップの56盗塁を記録した足。既にプロスペクトとして著名だったため今回の40人ロースター入りは当然。

Jose Marmolejosもやはりドミニカ共和国出身の23歳(笑)。左打ちの一塁手。昨シーズン、Hagerstown(A)で11本塁打を打ち、球団のMinor League Hitter of the Year(※)に選ばれるほど評価を上げました。今季は開幕をPotomac(A+)で迎え、100試合で11本塁打を打ったところでHarrisburg(AA)に昇格し、2年連続での球団のMinor League Hitter of the Yearに選ばれました。既に守備位置がファーストに限られている選手なので、どれほど伸びシロがあるか疑問ですが。

※球団のMinor League Hitter of the Year(とMinor League Pitcher of the Year)は、なんとなくですが当にならない印象があるので普段は基本的に無視しています。

そして最後にMatt Skoleです。かつてのトッププロスペクトも、故障あり不振ありで、既に27歳。このままマイナーFAとして退団かと覚悟していましたが、今季Syracuse(AAA)でリーグ3位の24本塁打を放った長打力(打率は.244、119奪三振ですが)で念願の40人ロースター入りを果たしました。

● Brandon Snyder, Corban Joseph, Braulio Lara, Derek Eitel, Dustin Antolinとマイナー契約
以下の5選手とマイナー契約。Non-Roster Inviteeとしてスプリングトレーニングに参加します。

Brandon Snyder, INF
Corban Joseph, 2B
Braulio Lara, RHP
Derek Eitel, LHP
Dustin Antolin, RHP

Brandon Snyderは元ドラ1(2005年, オリオールズ)。今季のブレーブスでの38試合を含め4球団でMLB通算120試合に出場した30歳のベテラン内野手。Corban Josephは2013年のヤンキースで7打席だけメジャーを経験したが、その後はマイナー暮らし。28歳の今季はオリオールズのAAAとAAでOPS.812とよく打った。なお、オリオールズのCaleb Joseph捕手は兄。Dustin Antolinはハワイ出身の27歳。今季ブルージェイズでメジャーデビュー(1試合だけ)。Braulio Lara(27歳)、Derek Eitel(29歳)の2人はメジャー経験はありません。

● Jimmy Cordero投手をトレード獲得
フィリーズからJimmy Cordero投手をトレードで獲得しました。対価は金銭かPTBNLと発表になっているので、トッププロスペクトを放出することはありません。

25歳のブルペン右腕。ドミニカ出身でブルージェイズと契約。AAで投げていた2015年の夏にBen Revereとのトレードでフィリーズに移籍。初めて参加した今春のキャンプで100マイル近い速球を披露し、将来のクローザー候補とも言われましたが、肩痛で離脱。手術は回避して7月に復帰しましたが、リハビリ登板も含めてマイナー(主にAA)で22試合に投げて5.00/1.37という残念な結果。先日、ルール5ドラフト前のロースター整理でDFAされていました。

故障の程度がはっきりしませが、上手く転べば楽しみな選手です。

[2016年11月更新, 2015年4月更新, 2014年4月更新, 2013年4月オリジナル]

第4回は2012年シーズンに大ブレイクし、一気にトッププロスペクトの仲間入りを果たしたMatt Skole。

[Player Data]
Name: Matt Skole
Position: 3B/1B
Born: July 30, 1989
Birthplace: Woodstock, Georgia
School: Georgia Institute of Technology
Height: 6-4
Weight: 220
Bats: Left
Throws: Right
Draft: 2011-5
Acquired: Draft
BA Organization Rank: 17(2012) ⇒5(2013)⇒4(2014) ⇒24(2015) ⇒NA(2016)
BA Overall Rank: NA

[Scouting Report]
選球眼に優れたパワーヒッター。プロ入り後に足を高く上げない打撃フォームに変えたことにより、引っ張り専門ではなく逆方向(レフト)にも強い打球を打てるようになった。左投手への対応も見せており、残す課題は変化球への対応。

サードの守備は守備範囲、肩ともまずまずという評価だが、2012年のアリゾナ秋季リーグではファーストも経験。以降は、両ポジションで併用されている。

[Background]
弟のJake Skoleは2010年ドラフト1順目(全体15位)でレンジャーズに入団した外野手。

ジョージア工科大では強打の三塁手として鳴らす。2011年5順目でドラフト指名を受けると、早々に契約してAuburg(SS)でプロキャリアをスタート。72試合に出場し、319打席で.290/.382/.438、リーグ最多の23二塁打、48打点という好成績を残す。BAのランキングでは球団内17位。

Hagerstown(A)で開幕した2012年シーズンに大ブレイク。開幕から打ちまくり、8月中旬にPotomoac(A+)に昇格するまでに本塁打(結局27本塁打はリーグ2位に8本差の独走トップ)、打点を量産し、出塁率、長打率でもトップとなったSouth Atlantic LeagueのMVPを受賞。A+昇格後は本塁打こそ出なかったが、それでも76打席で.314/.355/.486という良い数字。マイナーのシーズン終了後、球団公式のMinor League Player of the Yearに選ばれる。アリゾナ秋季リーグに派遣されると、不慣れな一塁守備に挑戦しつつも、17試合72打席で3本塁打を含む305/.419/.525という打撃成績を残し、プロスペクトとしての評価を確たるものに。BAのランキングでは球団内5位に浮上。

2013年はメジャーのスプリングトレーニングに初挑戦。24打席に立って.250/.406/.333という期待感を持たせる数字を残す。ところがHarrisburg(AA)での開幕2試合目、守備中に走者と交錯して左腕を故障し、TJ手術(投げるほうの腕ではないが)でシーズンを棒に振った。リハビリを経て10月のアリゾナ秋季リーグに参加したが、打率は2割に満たず散々な1年となった。

2014年もメジャーのスプリングトレーニングに参加。早々にマイナーキャンプ行きとなったが、17打席で本塁打1本を含む.333/.412/.733という好成績。Williams監督からJim Thomeと比較されるなど、パワーヒッターとして評価を高めた。ところが、開幕後はAAで大苦戦。4月を.177/.244/.228で終えると最後まで調子を上げることができず、故障なくフルシーズン過ごしながら.241/.352/.399、14本塁打という不本意な成績に終わり、プロスペクトとしての株は大きく低下した。

2015年は3年連続となるメジャーのスプリングトレーニングでも22打席で.409/.480/.727、2本塁打と頑張ったが、開幕後はまたもAAで打撃不振に陥り、5月終了時点の打率は.190。6月以降にやや盛り返し、7月下旬にはSyracuse(AAA)に昇格したものの、やはり打率は2割台前半。AA, AAA通算で.234/.340/.417の残念な成績に終わった。救いは計20本塁打の長打力を見せたことだが、三振も多く、手放しで喜べるものではない。シーズン終了後のBAのランキングでは遂にチーム内トップ30からも脱落。

26歳となった2016年は開幕からAAA。フルシーズン健康に過ごし、ファースト・サードの両ポジションで起用され、自己最多の140試合に出場したが、.244/.337/.437と打撃成績は相変わらず。守備も決して評価は高くない。このままマイナーFAで退団との観測もあった中、意外や意外、12月のルール5ドラフトを前に念願の40人ロースター入りを果たした。

[Comment]
かつてのトッププロスペクトが、もはや崖っぷちで踏みとどまっている状況。残された資産価値は長打力くらいでしょう。左の代打の切り札としてMLBで生き残っていくことができるかどうか。あまり大きく期待せず、見守っていきましょう。(2016年11月)

2014年は健康面では問題がなくスプリングトレーニングでも好調だっただけに残念な1年となってしまいました。4月のつまずきは自分にプレッシャーをかけ過ぎた結果のような気がします。2015年はいきなり崖っぷちになってしまいましたが、スプリングトレーニングでの好成績で多少は株を戻したはず。気を楽に頑張ってくれることを期待しています。(2015年4月)

結局2013年は完全に失われたシーズンとなりました。それでも各種プロスペクトランキングでの評価が下がっていないのは、それだけ素材が評価されているということ。AAでしっかり結果を残して、9月にはメジャーに呼ばれることを期待しています。(2014年4月)

高い期待を集めてのシーズンだったのに、いきなりの長期離脱。24歳になるこのシーズンを失うのは将来を考えてもかなり厳しい。何とか今季中に元気に戻ってきてくれることを願うばかりです。(2013年4月)

もう先週のことですが、主要サイトでは最も早く、Baseball Prospectus(BP)のナショナルズ組織内トップ10プロスペクトランキングが発表されました(元記事)。

1. Victor Robles, OF 
2. Lucas Giolito, RHP
3. Reynaldo Lopez, RHP
4. Juan Soto, OF 
5. Erick Fedde, RHP
6. Carter Kieboom, SS
7. Dane Dunning, RHP
8. Anderson Franco, 3B
9. Andrew Stevenson, OF 
10. Sheldon Neuse, INF

2016年ドラフト組からCater Kieboom、Dane Dunning、Sheldon Neuseの3人がランクイン。4位のJuan Sotoと9位のAndrew Stevensonを含め、半数の5人の顔ぶれが前年から代わりました。前年から消えた5人というのは、Trea Turner、Wilmer Difo、A.J. Cole、Pedro Severino、Austin Vothで、全員が現時点で40人ロースター入り(Voth以外はMLBデビュー済み)で「卒業」扱いと言っていいいでしょう。結構なことです。

このランキングに戻ると、1位がまず意外でした。夏にはMLB全体でも1位、2位を争うトッププロスペクトとの評価を得てメジャーデビューまで果たしたLucas Giolitoを差し置いて、Victor Robles。Giolitoはメジャーへの適応に苦しんでいることと、球速が落ちていることから少し評価を落とした模様。一方のRoblesは少し故障で離脱したものの、攻守ともに評価は上がり続けており、このランキングでは逆転に至りました。

3位のReyanaldo Lopezまでは確実に全体トップ100にも顔を出してくると思われますが、もしかすると4位のJuan Sotoも来るかもしれません。ドミニカ出身の18歳。左打ちの外野手。2015年の7月に150万ドルの大型契約で入団した時にちょっと話題になりましたが、当時はノーマーク。1年目17歳の今季、GCLでデビューし、.361/.410/.550、5本塁打の成績を残し、最終週にはAuburn(SS)に昇格し、そこでもしっかり打ってシーズンを終えました。守備・走塁の評価は高くありませんが、それを補って余りある長打力が魅力のようです。

5位のErick Feddeを挟み、6位にCater Kieboom、7位にDane Dunningと2016年のドラフト1順目コンビが並んでいます。この2人はデビューしたリーグでしっかり成績を残したので順当に思いますが、10位にSheldon Neuseが入ったことが次の驚きでした。元々オーバードラフト気味の評価だった上、Auburnでの打撃成績は.230/.305/.341、1本塁打でしたから、このように高く評価されるとは思いませんでした。この評価に応えるような来季を期待しましょう。

また、2016年は謎の足踏みに終わってしまったAnderson Francoが、プロ2年目でHarrisburg(AA)まで昇格し、アリゾナ秋季リーグでも大活躍だったAndrew Stevensonを上回ったことも意外でしたね。BPは公表時期が早かったので、アリゾナの結果は織り込まれていないのかもしれません。BAではStevensonはもっと上に来るのではないでしょうか。

最後に、リーグMVPが発表されました。

ナ・リーグは大方の予想通り、カブスのKris Bryantが初受賞。昨季の新人王に続くタイトルです。もう押しも押されぬ大スターですね。30人の投票した記者のうち29人からの1位票を集め、残る1人からも2位票を得る「準満票」での受賞となりましたが、ただ1人、Bryantに2位票を入れたNew York Post紙のMike Puma氏が1位票を入れたのが我らがナショナルズのDaniel Murphy。

2位票、3位票の数が全く同数だったMurphyとドジャーズのCorey Seagerでしたが、この1票のおかげでMurphyが2位となりました。最後の数週間をけがで欠場したことでかなりの(2位)票を失ったと思われますが、2位を守り切って良かったです。それにしても昨シーズン後半からのMurphyは、それ以前とは全くの別人のようなスーパースターです。昨シーズンはFA直前のフロックで、オフにFA契約を結んだ際には「高値掴みをした」といった懐疑的な声もありました。かくいう私も「ピークは過ぎた」とか「いぶし銀」とか書いていました。いやはや、とんだ失礼をしました。

この他、ナショナルズの選手では、Max Scherzer(総合10位)、Wilson Ramos(総合18位)が得票していましたが、前年MVPのBryce Harperには一票も入りませんでした。

大接戦のア・リーグは、エンゼルスのMike Troutが2度目の受賞。チームが74勝88敗と大きく負け越していたため、今年も受賞することに疑問を呈する声もありましたが、成績としては文句なし。負け越しチームからのMVPは2003年のレンジャーズのAlex Rodriguez以来だそうです。

6週間にわたって開催されたアリゾナ秋季リーグが終了。ナショナルズ傘下から参加していた選手の成績を紹介しておきます。(11月2日付の中間報告の記事はこちら)

Austin Voth, RHP 
7G(7GS) 29.2IP 11BB 23K 5.16/1.15
中間報告までの4試合は防御率10.43と苦しんでいましたが、その後の3試合を3試合とも「5回無失点勝ち投手」と完ぺきに立て直しました。11月12日までの週にはAFLの週間MVPにも選ばれ、最高の形で終了。(→11月18日に初の40人ロースター入りが発表されました!)

Nick Lee, LHP 
10G 11.2IP 10BB 14K 1.54/1.71
こちらも中間報告以降の4試合は4イニングを無失点、6奪三振に対して、与四球は2つだけという好投で、決して悪くない成績で終えました。。

Ryan Brinley, RHP 
9G 10.2IP 1BB 9K 2.53/0.66
中間報告後の3登板ではもランナーを1人も出さず。9試合という限られた機会ながら素晴らしいピッチングで評価を上げました。

Jake Johansen, RHP 
9G 12.2IP 3BB 5K 2.13/1.26
中間報告後、1試合で2失点しましたが、残りは無失点。登板した9試合のうち7試合で無失点。決して悪くない成績で終えました。元ドラ1、首の皮一枚で残っています。

Drew Ward, 3B
21G 81AB 0HR 8RBI 10BB 21K .309/.391/.383 1SB
後半やや失速したとはいえ、それでも打率3割を維持。引き続き四球を選んで高い出塁率を維持したことも評価していいと思います。傘下から参加した選手の中では最年少。今後に活かしてくれることを期待しましょう。

Andrew Stevenson, CF 
21G 85AB 2HR 12RBI 10BB 17K .353/.417/.518 9SB
11月7日に6打席で5安打を記録するなど後半になるにつれて調子を上げ、最終的な打率.353はリーグで2位の好成績でした。足を活かした三塁打を2本稼いだこともあって長打率もリーグ6位。守備、足を含め、非常に大きく評価を上げた秋になりました。

Osvaldo Abreu, SS 
16G 60AB 0HR 8RBI 4BB 20K .267/.303/.317 5SB
シーズン終盤は出場機会が減りましたが、出場した6試合のうち5試合で安打(うち3試合では2安打)を記録し、打撃成績を向上させました。守備の評価は高かったようです。

[2016年11月更新, 2015年12月更新,2015年1月オリジナル]

2015年の2人目、全体第22回はAustin Voth投手。

[Player Data]
Name: Austin Voth
Position: RHP
Born: June 26, 1992
Birthplace: Redmond, WA
School: University of Washington
Height: 6-1
Weight: 190
Bats: Right
Throws: Right
Draft: 2013-5
Acquired: Draft
BA Organization Rank: 15(2014) ⇒12(2015)⇒ 9(2016)  
BA Overall Rank: NA


[Scouting Report]
高い位置から投げ下ろす、いわゆる本格派の右腕。速球はせいぜい90マイル台前半だが、制球力に非常に優れており、チェンジアップとカーブを交えて空振りさせることができる。奪三振数は多く、四球は少ない。ブルペンよりは先発向き。上限はローテーション下位と言われる。

[Background]
2013年シーズンにはワシントン大学のエースを務め、PAC 12という強豪校が並ぶリーグで奪三振王となったが、ドラフト前の評価は必ずしも高くなく、ドラフト5順目でナショナルズに入団。ルーキーリーグで2試合、ショートシーズンで7試合、8月末にHagerstown(A)に昇格して2試合の計11試合に先発し、1.75/0.84、46.1イニングで55奪三振の好成績。

2014年は、開幕したAでの13試合(オールスター選出)、夏場に昇格したPotomac(A+)での6試合でいずれも打者を圧倒するようなピッチング(計2.10/0.89)を見せて評価を高め、シーズン終盤にはHarrisburg(AA)まで到達。フルシーズン1年目の疲れもあってかAAではさすがに打ち込まれた(6.52/1.60)。依然としてイニング数を上回る三振を奪っており、プロスペクトとしての地位を確立した。

2015年はHarrisburg(AA)でフルシーズン、ローテーションを守った。シーズン序盤は防御率が4点台で推移したものの、徐々に調子を上げてEastern Leagueのオールスターに選出される。後半戦も好投を続け、最後の2登板を無失点で防御率を2点台まで引き下げて締めくくった。148奪三振はリーグトップ。自己最多の157.1イニングを投げた。

Syrcuse(AAA)にステップアップした2016年も年間通じてローテーションを守り、157イニングで3.15/1.24と、ここでも通用することを示した。セプテンバーコールアップの有力候補だったが、結局声はかからず。アリゾナ秋季リーグで結果を残し(4試合打たれまくった後、3戦連続無失点)、12月のルール5ドラフトを前に40人ロースター入りを果たした。

[Comment]
Lucas GiolitoやReynaldo Lopezに追い抜かれ、2016年は内心悔しい思いをしたはず。40人ロースター入りを果たして、いよいよ2017年にはメジャーデビューでしょう。これまで通り下馬評を覆す投球術を披露してくれることを期待しています。(2016年11月)

AAの打者も難なく抑え、プロスペクトとしての地位を大いに引き上げました。来春はメジャーのスプリングトレーニングに呼ばれることはほぼ間違いないでしょうし、メジャーデビューも視野に入ってくると期待されます。(2015年12月)

多くの軟投派投手がぶつかるAAあたりの壁を乗り越えてメジャーリーガーに近づくことができるか、注目のシーズンとなります。(2015年1月)

[2016年11月更新, 2015年9月更新, 2014年7月オリジナル]

第18回にして、2014年シーズンのMy Top 10 Prospectsの最後となるのが、ドミニカ出身のJefry Rodriguez投手。

Photo by Jeremy Houghtaling @CitizenHough

[Player Data]
Name: Jefry Rodriguez
Position: RHP
Born: July 26, 1993
Birthplace: Haina, Dominican Republic
School: NA
Height: 6-5
Weight: 185
Bats: Right
Throws: Right
Draft: NA
Acquired: International FA (2012)
BA Organization Rank: 18(2014) ⇒20(2015)  ⇒NA(2016)
BA Overall Rank: NA

[Scouting Report]
ドミニカ出身の長身右腕投手。ナショナルズと契約するまでは内野手だった。速球は既に常時90マイル台前半を計時するが、体格の成長、フォームの向上により速くなる余地があると見込まれている。ただ、投手になってからの経験不足もあり、変化球、制球はまだまだ発展途上。そもそもフォームも十分に固まっていない。変化球としては、縦に割れるカーブとスプリッター、それにチェンジアップも投げているが、いずれもまだまだ。とにかく発展途上の投手。

[Background]
2012年1月にナショナルズと契約。契約してすぐに投手にコンバートされると、その年のドミニカ夏季リーグでなかなかの成績を残し、米本土上陸の切符を勝ち取る。

米本土初年度の2013年シーズンには、49勝9敗という北米プロ野球史上最高勝率でぶっちぎりの優勝を果たしたGCLナショナルズのエースとして活躍。個人でも12試合47.2回に登板して、2.45/1.26、43奪三振の好成績で一躍評価を上げることに成功。課題の制球力でも、2012年の9イニングあたり6.9個から3.8個へと大きく改善。

2014年は、5月にフルシーズンのHagerstown(A)で開幕したが、4試合中2試合で打ち込まれたこともあり、6月にはAuburn(SS)に降格された。そのSSでは3試合16回1/3を投げて5失点(防御率2.76)、WHIP 1.22と通用することを示したが、早々に故障で離脱し、そのままシーズン終了。

Hagerstownに再挑戦となった2015年も開幕から9試合で防御率7.45と打ち込まれ、またもAuburnに降格。Auburnでも、7月13日までの週に週間MVPに選ばれるなど好投した試合もあったが、残った数字は13試合で5.11/1.35という厳しいものとなった。

2016年も3度目となるHagerstownでの開幕。開幕から好調で、6月15日までの13先発を6勝2敗、3.13/1.07という文句のない成績で、South Atlantic Leagueのオールスターにも選出された。しかし、オールスター明けの初戦で3回途中7失点と打ち込まれると、以降調子を崩し、後半の12先発では1勝9敗、7.29/1.62と別人のような成績。評価が難しいシーズンとなった。

[Comment]
2016年後半の失速の理由がはっきりわからない点は不安ですが、いい時は素晴らしいピッチングをするのでプロスペクトとしての期待感はある程度維持されています。来季はいよいよA+に挑戦でしょう。そこで2016年前半のような投球内容(与四球、被本塁打数も少なかった)ができれば、先が見えてくるはずです。(2016年11月)

2014、2015の2年間は完全に足踏みしてしまいましたが、まだ22歳。依然として先発として起用されており、期待を完全に失ってしまうのはまだ早過ぎるはず。来季はプロスペクトとしての期待感という意味では正念場となりそうです。(2015年9月)

まだまだ未知数ですが、本格右腕として大きく育ってくれることを期待したいです。(2014年7月)

続いて各ポジションの最強打者を決めるシルバー・スラッガー賞。

ナショナルズからは、Daniel Murphy二塁手とWilson Rasmo捕手がいずれも初受賞です。この2人を含め、ナ・リーグは9人中8人が初受賞(残るNoran Arenadoも昨年が初受賞の2度目)という新鮮な顔ぶれとなりました。名前でなく今シーズンの活躍を踏まえた投票に基づく結果になっていることの証左でしょうね。いいことです。

National League 
C Wilson Ramos, WAS (初)
1B Anthony Rizzo, CHC (初)
2B Daniel Murphy, WAS (初)
3B Nolan Arenado, COL (2年連続2度目)
SS Corey Seager, LAD (初)
OF Charlie Blackmon, COL (初)
OF Yoenis Cespedes, NYM (初)
OF Christian Yelich, MIA (初)
P Jake Arrieta, CHC (初)

American League
C Salvador Perez, KC (初)
1B Miguel Cabrera, DET (2年連続7度目)
2B Jose Altuve, HOU (3年連続3度目)
3B Josh Donaldson, TOR (2年連続2度目)
SS Xander Bogaerts, BOS (2年連続2度目)
OF Mark Trumbo, BAL (初)
OF Mike Trout, LAA (5年連続5度目)
OF Mookie Betts, BOS (初)
DH David Ortiz, BOS (3年ぶり7度目)

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