第2弾はポストシーズン編。

ナ・リーグ東地区優勝、リーグ2位の勝率でポスシーズンに進んだナショナルズ。相手は西地区優勝、同3位のドジャーズでした。

改めて、全5戦の結果は以下の通り。

Game 1 L 3-4  Kershaw対策はしてきたが
Game 2 W 5-2 Lobaton Lobaton Lobaton!
Game 3 W 8-3 Werthのバットでドジャーズを粉砕
Game 4 L 5-6 野球は2アウトから
Game 5 L 3-4  「3度目の正直」もならず、終戦

第3戦で王手をかけ、第4戦を落としたとはいえ休養十分のエースMax Scherzerを立ててのホームでの第5戦。ドジャーズはエースClayton Kershawを第4戦で使い切っていた(はずだった)こともあり、全く負ける気がしていませんでした。が、それでも勝てず。2012年、2014年に続く3度目となる「NLDS敗退」に終わってしまいました。

戦力的には、打線でも主軸の捕手Wilson Ramosと、先発2番手だったはずのStephen Strasburgを故障で欠いていましたが、Ramosの代わりに出たJose Lobatonは第2戦のヒーローになりましたし、Scherzerが先発した第1戦と第5戦を落としては、この2人の不在が敗因とも言い難いですね。

投手陣はドジャーズより上だったと思います。チーム防御率/WHIPは、ナショナルズの3.89/1.25に対して、ドジャーズは4.91/1.46。Scherzerを除く先発陣(Tanner Roark, Gio Gonzalez, Joe Ross)の3人ともが5回を投げきれませんでしたが、それはKershaw以外のドジャーズ先発陣(Rich Hill, 前田健太)も同じこと。第3戦まで完ぺきだったナショナルズ・ブルペン陣が最後に打たれ、ドジャーズ・ブルペンは勝負所で踏ん張り切ったという、わずかの差で勝負がついたように思います。改めてスタッツを見ると、エースセットアッパーのShawn KelleyとクローザーのMark Melanconはシリーズを通じて無失点でしたから、「そこまでつなげなかった」ということ。だからと言って中継ぎ陣で誰かが試合を壊したかといえばそういう感じもありません。

シリーズを通じてのチーム打撃成績は、.251/.350/.365、4本塁打、24得点。盗塁は8つ成功(1つ失敗)。決して悪い数字ではありません。個々人を見ても、Daniel Murphy, Jayson Werth, Ryan Zimmermanの3人のOPSは.900を超ですから、好調だったと言えます。Trea Turnerも打率.316、出塁率.333でテーブルセッターとしての仕事はしっかりしていました。Anthony Rendon (.150/.190/.300)がブレーキになった印象もありますが、第3戦では前田からカギになるホームランも打ったし、戦犯とは呼べません。Danny Espinosaが打てないのは想定の範囲内。しっかり死球で出塁してくれましたし、守備はもちろん良かった。結局、Bryce Harperを封じられたことが痛かったということでしょう。チーム最多の6つの四球を与えられて出塁率は.458でしたが、本塁打なしで打点も1に終わりました。

改めて振り返ってみると勝負を分けたのは、Dave Roberts監督とDusty Baker監督を中心とするベンチの采配の差だったのではなかろうかと思います。Harper対策をしっかりしてきたドジャーズは素晴らしかったですね。ナショナルズもKershawは研究して臨んだと思いますが、大事なところで暴走でランナーを消してしまったシーンもありました。そして、第5戦。勝負を分けた7回表に、慌てふためいたようにしか見えない継投策を取ることになったBaker監督に対し、Roberts監督が終始先手を取っていたように見えました。この試合、1失点の先発Hillを3回途中でスパっと切って、エースセットアッパーのJoe Blantonを投入し、7回裏無死で早くもクローザーのKenley Jansenにスイッチしてピンチを切り抜け、そして9回にはまさかのKershaw登板。Roberts監督の采配が光る試合になりました。

※なお、レギュラーシーズン編でも書いたように、Baker監督のレギュラーシーズンでの業績は高く評価しています。選手の管理・モチベーション付け、メディア対応を含めいい監督だと思います。来季、コーチ陣を含め留任することに何の異存もありません。ただ、ああいう切羽詰まった場面での采配には疑問が残る監督であることは確かです。

これ以上のチャンスはなかなかないという絶好の展開でしたが、勝てませんでした。またやり直しです。

来年こそ!

今季、ルーキー資格を持って出場した選手は次の14人でした。うち、規定出場機会(打者130打席、投手50投球回数)に到達してルーキーを卒業した選手は太字で記載の4人でした。一方で、赤字で記載の5人が今季メジャーデビューを果たしました。おめでとう!

Trea Turner
Felipe Rivero
Sammy Solis 
Trevor Gott (今季はわずか6イニングでしたが、前年までにエンゼルスで47.2イニングを投げていたため卒業)
Matt Grace
Rafael Martin
Wilmer Difo
A. J. Cole
Pedro Severino
Brian Goodwin
Reynaldo Lopez
Lucas Giolito
Koda Glover
Spencer Kieboom

チーム新人王はTrea Turner。リーグ新人王投票でも2位になったのですから当然です。

Syracuse(AAA)のショートで開幕から打ちまくり、夏にはAAAのオールスターにも選出されるなど昇格に向けた準備は万端。6月にRyan Zimmermanの出産立会休暇の際に3日間だけ昇格し、3打数3安打1四球と結果を残してアピールしましたが、本職であるショートではDanny Espinosaが(特に前半戦は)意外なほどの高いパフォーマンスを発揮していたため、なかなか本格昇格の機会はめぐってきませんでした。

7月8日にZimmermanのDL入りにより再昇格しましたが、当初はDaniel Murphyがファーストに入る日のセカンドとして起用される控え扱いでした。転機となったのはセンターへのコンバート。元々今季のナショナルズのセンターはオフにトレードで獲得したBen Revereがレギュラーと目されていましたが、開幕戦でDL入り。代役を務めたMichael Taylorが期待外れに終わり、復帰したRevereもさっぱり打てないという状態で7月下旬を迎えていました。Turnerにとって、センター守備は全く未経験の領域でしたが、持ち前の運動能力で最低限守れることが確認されてからは、「1番センター」でレギュラーに定着することになりました。

以降は下記の数字の通りの大活躍で、8月、9-10月と2か月連続で公式のナ・リーグ月間最優秀新人賞を受賞。特に9月には、他の打者陣が低迷する中で文字通り打線を引っ張りました。内容を見ても、もともと定評のあった打率、盗塁だけでなく、長打力も示し、ナショナルズあるいはMLB全体でも最もエキサイティングな選手との1人と評価されるほどになりました。

8月:   131PA 27R 5HR 15RBI .357/.366/.571 11SB
9-10月: 129PA 19R 8HR 18RBI .339/.380/.612 15SB
NLDS:  24PA 5R 1HR 1RBI .318/.333/.318  2SB

来季以降、長きにわたってナショナルズのリードオフを務めてくれることでしょう。問題は守備位置。ショートの守備力は最高レベルではないので、いずれどこかのタイミングで今季守ったセンターか、あるいはセカンド、サードへのコンバートもあるかもしれません。まあ、それは先のこと。

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かなり差がありますが、Turnerに次ぐ活躍を見せたと評価できるのが、NLDSでもロースター入りしたReynaldo Lopez、Sammy Solis、Pedro Severinoの3人(Severinoついては、Wilson Ramosの故障という要因があったにせよ)。Lopezはトレードされていきましたが、残る2人は今後のナショナルズに不可欠の人材。特にSeverinoには2018年あたりには正捕手となってくれることを期待しましょう。

また、後半戦のクローザーMark Melanconとのほぼ1対1のトレードでパイレーツに移籍したFelipe Riveroも違った形で貢献してくれました。パイレーツでも結果を残し、ブルペン投手としてしっかりと地位を確立しています。

Minor League BallのJohn Sickelsのプロスペクトランキングも発表されていました(元記事)。こちらも、Adam Eatonのトレードの後に発表されています。

トップは当然ながらVictor Roblesですが、昨年の1位Lucas GiolitoがGrade A、2位Trea TurnerがGrade A-をつけてもらっていたのに対し、今年のRoblesはGrade B+/A-という厳しい評価(Robles自身は昨年のB/B+から評価を上げていますが)。以下も、昨年に比べるとやや寂しい絶対評価となっています。

Grade B+/A-:
1. Victor Robles, OF
Grade B+
2. Erick Fedde, RHP
Grade B
3. Juan Soto, OF
Grade B-
4. Carter Kieboom, SS
5. Koda Glover, RHP
6. Austin Voth, RHP
7. Sheldon Neuse, 3B
Grade B-/C+
8. A.J. Cole, RHP
9. Andrew Stevenson, OF
Grade C+
10. Drew Ward, 3B
11. Wilmer Difo, INF
12. Pedro Severino, C
13. Brian Goodwin, OF
14. Tyler Watson, LHP
15. Rafael Bautista, OF
16. Kelvin Gutierrez, 3B
17. Osvaldo Abreu, INF
18. Joan Baez, RHP
19. Yasel Antuna, SS
Grade C+/C
20. Rhett Wiseman, OF

今年のドラフト組への高い評価が目立ちます。また、ドミニカ出身でBAでは7位にランクされていたLuis Garcia遊撃手がトップ20圏外と大きく評価を違えました。さてさて。

BAからナショナルズのトップ10プロスペクトが公表されました(元記事)。先日のAdam Eatonのトレードを踏まえたものとなっています。

1. Victor Robles, of
2. Erick Fedde, rhp
3. Juan Soto, of
4. Wilmer Difo, ss/2b
5. Andrew Stevenson, of
6. Koda Glover, rhp
7. Luis Garcia, ss
8. Carter Kieboom, ss
9. Pedro Severino, c
10. Austin Voth, rhp

1位は予想通り(Lucas Giolitoがいればどうだったか分かりませんが)Victor Robles。2位には、これは完全に押し上げられた形だと思いますが、Erick Fedde。これだけ投手プロスペクトを放出してしまうと、Feddeにかかる期待はどうしても大きくなります。そして3位には、Juan Sotoがここでも高く評価されています。

4位のWilmer Difoと6位のKoda Glover、それに9位のPedor Severinoはメジャー経験組。BPでは3人ともトップ10に名前がありませんでしたが、卒業扱いなのか、それとも本当に評価されていないのかは微妙なところですね。

7位のLuis Garciaは今年の夏に契約したドミニカ出身の遊撃手。まだプレー経験はありませんが、契約開始解禁日(昨年7月)直前のランキングでBAは全体で3位と高く評価していた選手です。

意外なのは、今年のドラフト1順目入団のCarter Kieboomの評価があまり高くないこと。こちらもDane Dunningが残っていればどちらが上だったかは聞いてみたいところです。もし、Dunningのほうが上なら、Kieboomはそもそもトップ10に入らなかったことになりますから(逆にKieboomのほうが上なら、Dunningがトップ10外となった)。

12/1 Jose Lobatonと年俸調停を回避して1年契約
12/2 Derek Norrisをトレード獲得
12/2 Ben RevereがノンテンダーFAとして退団(Danny Espinosaを含め他の対象者には契約提示)
12/7 Adan Eatonをトレード獲得(Lucas Giolito, Reynaldo Lopez, Dane Dunningを放出)
12/10 Danny Espinosaをエンゼルスへトレード (Austin AdamsとKyle McGowinを獲得)
12/14頃 Emmanuel Burriss等とマイナー契約



● Jose Lobatonと年俸調停を回避して1年契約
昨日から、パイレーツとの間でAndrew McCutchenのトレードの話題で盛り上がっています。うーむ。いい選手だと思いますが、今季は打撃が大きく落ち込み、守備もセンターを任せるには心許なくなっています。そのMcCutchenの残り2年に対して、パイレーツはVictor Robles、Reynaldo Lopezにさらにもう1人を要求しているという噂。Robles1人でも出し過ぎだと思います。。。

さて、年俸調停対象選手に対する球団側からのオファー期限が2日の金曜日に設定されているところですが、この期限の前日に、Jose Lobatonとの間で1年157.5万ドルで合意しました。FA前の最終年となる来季も、引き続き、控え捕手としてロースター入りすることになります。問題は、正捕手。Pedro Severinoに任せてみるのか、それともトレードか、はたまたFA選手(Matt Wieters?)か。Severinoに任せてもいいと思うのですが、どうでしょうね。

● Derek Norrisをパドレスからトレードで獲得
控え捕手としてLobatonと契約した翌日、早くも正捕手候補についても答えを出しました。パドレスからトレードでDerek Norrisを獲得。ナショナルズからは今季Hagerstown(A)で投げていた先発右腕のPedro Avila投手がパドレス傘下に移ります。(詳細は別記事)


● Ben RevereがノンテンダーFAとして退団
12月2日が年俸調停対象選手への球団からの契約提示期限だったのですが、この期限を前に、1年契約(例.Lobaton)やトレード(例.Norris)など対象選手をめぐる様々な動きがありました。そして迎えた期限の日、ナショナルズはBen Revereに契約を提示せず、この結果、Revereはいわゆる「ノンテンダーFA」としてFA選手となりました。

昨オフ、Drew Storenとのトレードで加入。FA退団したDenard Spanの後釜の1番センターと期待されましたが、開幕戦での負傷に始まり、とにかく打てず(103試合、375打席で.217/.260/.300)、NLDSのロースターからも外れる始末。年俸調停プロセスを経ての予想年俸が900万ドル程度とあってノンテンダーが予想されていましたので、驚きはありません。なお、トレード相手だったDrew Storenも非常に残念なシーズンを送った末にFAとなり、メジャー契約を得られるかどうか微妙な情勢となってしまっています。

Revere以外の年俸調停対象選手、すなわち
Bryce Harper
Tanner Roark
Anthony Rendon
Danny Espinosa
それに獲得したばかりのDerek Norris
の計5選手には契約を提示しました。Espinosaについてはノンテンダーの噂もありましたが、守備力だけでも十分に価値のある選手なので、契約提示は賛成です。

● Adam Eatonをトレード獲得(Lucas Giolito, Reynaldo Lopez, Dane Dunningを放出)
Andrew McCutchenを中心としたトレードパッケージをパイレーツと交渉しているという情報が流れていましたが、蓋を開けてみれば、ホワイトソックスとの間でAdam Eatonのトレードに合意しました。対価は、Lucas Giolito, Reynaldo Lopez, Dane Dunningのトッププロスペクトの3投手。高くはつきましたが、Eatonのリーズナブルな契約内容などを鑑みると許容範囲のトレードでしょう。少なくともMcCutchenよりはずっといい。(詳細は別記事)

ただ、GiolitoとLopezを放出したことで上層の先発投手がかなり手薄になりました。Stephen StrasburgとJoe Rossの健康状態に不安が付きまとうことを思うと、さらなるトレードかFAで多少補強するのではないかと見ています。


● Danny Espinosaをエンゼルスへトレードし、Austin AdamsとKyle McGowinを獲得
長年ナショナルズの二遊間を守ってきたDanny Espinosaがエンゼルスへトレードされました。Adam Eatonの獲得でTrea Turnerがショートに回ることになり、浮いた形になったEspinosaを放出ということで驚きはありません。昨年、Yunel Escobarをやはり2人の右腕投手との交換でエンゼルスにトレードしたのがちょうど1年前の2015年12月10日だったという点はちょっと驚きましたが。

獲得したのは、ぎりぎりプロスペクトとしての期待感を維持しているという感じの25歳の2人の右腕投手。Austin Adamsはブルペン、Kyle McGowinは先発投手として育成されています。うち、Adamsは先月、ルール5ドラフトを前に40人ロースター入りを果たしています。ちょっとは期待できるかな。(詳細は別記事)

● Emmanuel Burriss, Jacob Turner, Tim Collins, Mike Broadwayとマイナー契約
以下の4選手とマイナー契約。Non-Roster Inviteeとしてスプリングトレーニングに参加します。

Emmanuel Burriss, INF 
Jacob Turner, RHP
Tim Collins, LHP
Mike Broadway, RHP 

Emmanuel Burrissは31歳の両打ちのミドル・インフィールダー。2008-2012年にはジャイアンツで282試合に出場実績があります。その後しばらくマイナー暮らしが続きましたが、2015年の夏場にナショナルズでメジャーに復帰(5試合だけでしたが)。今季はフィリーズで39試合に出場していたので、出戻りになります。

右腕投手のJacob Turnerは2009年のドラフト1順目全体9位でタイガースに入団し、2012年には20歳でメジャーデビューした元トッププロスペクト。ただ、メジャーでは結果を残せず、故障もあって2015年はついにメジャー登板なし。今季は夏以降ホワイトソックスでモップアップを務めましたが、24回1/3で防御率6点台後半と散々でした。

Tim Collinsは2011-2014年にはロイヤルズで4シーズン計228試合に登板し、防御率3.54と活躍したブルペン左腕。2014年の途中にヒジを痛め、それでもポストシーズンで4試合に登板しましたが、オフに自身2度目のTJ手術。以降リハビリに取り組んできましたが、昨季・今季はマイナーでの登板さえありませんでした。まだ27歳なので復活すれば面白い存在です。

Mike Broadwayは29歳のブルペン右腕。ジャイアンツで2015年にメジャーデビューしましたが、今季はマイナーに落とされ、夏に横浜ベイスターズに移籍してプレーしました(横浜では5試合だけ)。

いよいよ年の瀬も迫ってまいりました。毎年恒例のシーズンレビュー・シリーズを始めていきます。

まずはレギュラーシーズン編から。

あまりに醜悪だった2015年シーズンを終えた後、選手統率力に定評のあった大ベテランのDusty Bakerを新監督に据えて迎えた今シーズン。さすがはBaker監督といっていいでしょう、安定した戦いぶりでリーグ2位の95勝を記録し、2年ぶり3度目のナ・リーグ東部地区優勝を達成しました。

ブレーブスとの開幕2連戦2連勝を含め、最初の10試合で9勝というスタートダッシュを決めると、4月中に早々と貯金10に到達。5月に入るとシカゴでカブスに4連敗を喫するなど苦しみ、一時はメッツに抜かれましたが、最大でも0.5差でくらいつき、わずか4試合で首位を奪還。以降、6月下旬の7連敗など多少の谷もありましたが、シーズン終了まで地区首位を譲ることはありませんでした。オールスター前後に5連勝して、7月下旬に貯金20。その後も勝ち星を重ね、9月12-14日のメッツとの最後の直接対決3連戦を2勝1敗で勝ち越した時点でマジック7とし、地区優勝の行方を決定付けました(最終的には、24日にパイレーツに勝って決定)。

最終成績は95勝67敗。全ての月間成績で勝ち越すとともに、地区のライバル4チーム全てに勝ち越す、「完全地区優勝」を達成。これは、2012年、2014年にもできなかった偉業です。

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チームスタッツも振り返っておきましょう。

チーム総得点は30球団中(以下同じ。)8位。チーム打率.256は17位と平均以下。出塁率.325は10位、長打率.426は12位と少しましになりますが、それでもトップ10には入りません。主要項目でトップ10に入るのは6位タイの盗塁数くらい。それで得点力が8位ということは、かなり効率の良い得点の仕方だったということかと思われます。もっとも、得点圏打率も14位なので、どういう要素でこういう結果になったのかは(いろいろデータを見てみましたが)結局のところわかりませんでした。

2016年のナショナルズを引っ張ったのは投手力でした。総失点、チーム防御率(3.52)は2位。WHIP(1.19)は3位、奪三振数、奪三振率(24.5%)は2位、被本塁打率(9イニングあたり0.96本)も3位と全く非の打ちどころがありませんでした。しかもナショナルズ投手陣の素晴らしいところは、先発陣もブルペンも両方とも同水準に良かったという点。先発陣はカブスが、ブルペンはドジャーズがそれぞれトップでしたが、ナショナルズはどちらでも2位か3位の成績。実に素晴らしい投手陣でした。

最後に守備。どのデータで評価するかは議論が分かれるところですが、古典的なエラー数でみると、シーズンを通じて73エラー。これはジャイアンツに次ぐ2位の少なさでした。

と、まあ、素晴らしいレギュラーシーズンだったわけです。

[2016年12月”再”最終更新, 2016年10月最終更新, 2015年3月オリジナル]

2015年の新規3人目、全体23人目は、2014年に急速に評価を上げたReynaldo Lopez投手。(オリジナル時)

2016年のワールドシリーズは、最強ローテーションにリーグMVP確実と言われるKris Bryantを軸とする打線で1945年以来のワールドシリーズ出場となる「大本命」カブスと、エースのCorey Kluberだけを残してローテーション投手が軒並み故障して投げられない中、セットアッパーAndrew Millerの起用法を含むTerry Franconaのマジックで勝ち上がってきた「ダークホース」インディアンズの対決となりました。面白そうですが、まあ、それはともかく、Prospect Profileシリーズの更新です。(2016年10月最終更新時)

10月にメジャーデビューに伴う「最終更新」としてアップしましたが、12月にLucas GiolitoらとともにAdam Eatonとのトレードでホワイトソックスに移籍しましたので、”再”最終更新します。(2016年12月)

[Player Data]
Name: Reynaldo Lopez
Position: RHP
Born: January 4, 1994
Birthplace: San Pedro de Macoris, Dominican Republic
School: NA
Height: 6-0
Weight: 185
Bats: Right
Throws: Right
Draft: NA
Acquired: International FA(2012)
BA Organization Rank: ⇒ 4(2015)  ⇒5(2016)
BA Overall Rank: 49(2015) ⇒92(2016)

[Scouting Report]

右の「本格派」投手。最大の武器は100マイルに達する速球。長身を活かして上から投げ下ろす角度のある速球は常時95マイル以上。これに加えて、縦に大きく鋭く曲がるカーブを交えることで空振りが取れる。他に持ち球はチェンジアップもあるが、決め球としては今一つ。投球フォームはスムーズで安定しており、制球で崩れるということはないローテーション投手としてもやっていけるが、球威を活かしてブルペンに回る可能性も取りざたされている(2016年の9月~NLDSではロングリリーフを経験)。

[Background]
2012年の夏に18歳でナショナルズと契約。当初は球速も90マイル未満でさして期待されていなかった。契約直後に5試合10.2イニングを投げた後、2013年には米本土に上陸したものの、腕の痛みのためAuburn(SS)とHagerstown(A)で各1試合の登板にとどまった。

飛躍の年となったのは2014年。コーチ陣の指導のもと投球フォームを矯正して大変身。速球は常時95マイル前後で時には100マイルにも達するようになり、カーブが武器として使えるレベルになったこともあって、SSやAの打者を完全に支配。16試合83.1イニングに登板して、1.08/0.82と圧倒的な数字を残し、一躍プロスペクトとして注目されることになった。BAでの全体49位を筆頭に各ランキングで軒並み全体トップ100入り。

一転して2015年は「足踏み」のシーズンとなった。Potomac(A+)で開幕を迎えると、最初の3試合計17イニングで1失点と好投したが、5月下旬から打たれ始め、3回持たずに5失点とか6失点でKOされることもあった。夏を迎えて復活し8月には週間MVPも受賞したが、直後に背中の痛みを訴え、19試合99イニングで4.09/1.22、94奪三振、28四球という微妙な数字を残し、8月18日の登板でシーズン終了。

2016年はHarrisburg(AA)で開幕したものの、5月~6月にかけての10試合54.1イニングで防御率2.48、そしてなんと81奪三振という圧倒的なピッチングで卒業し、Syracuse(AAA)に昇格。また、7月にはMLBのオールスターの前座開催のフューチャーズ・ゲームにもナショナルズを代表して出場。

そして、オールスター明け7月19日のドジャーズ戦でメジャーデビュー(先発)。先に昇格・デビューしたLucas Giolitoが今一つだったこともあって回ってきたチャンス。ただ、1回表先頭のChase Utleyに右中間へホームランされたのを皮切りに、計6失点で5回途中降板というかなり苦いデビュー戦となった。この後、AAAとメジャーとを行ったり来たりする中、8月13日のブレーブス戦で7回1失点と好投し、メジャー初白星。9月に入るとロングリリーフとして起用され、適性を見せたことでNLDSのロースターにも入った(1試合2イニングに登板)。メジャーでの数字は11試合(うち6先発)で4.91/1.57という微妙なものだったが、44イニング(まだルーキーステータスを維持)で42個の三振を奪うなど可能性を感じさせた。

2016年12月7日、Lucas Giolito、Dane Dunningとともに、Adam Eatonとのトレードでホワイトソックスに移籍することになった。

[Comment]
ドミニカ共和国出身の投手プロスペクトでは、私が当ブログを始めてから初めてといってもいいくらいの成功例。ファンをわくわくさせるピッチングができる投手だっただけにGiolito以上に惜しい気持ちがあります。ナショナルズにいたら先発投手として大成できたかどうかはわかりませんが、再建モードのホワイトソックスならローテーション投手としてチャンスが与えられるはず。今後の活躍を心から願っています。(2016年12月)

ほぼ同じペースでステップアップし、メジャーデビューでは先を越されたLucas Giolitoが今のところメジャーに適応しきれないままなのに対し、Lopezは先発で2つ白星を記録した上、9月にロングリリーフに回ってからは素晴らしいピッチングを披露し、結果的に5勝を記録しています。ブルペン投手としての適性もありそうですが、まだ若いし、来季はAAAで待機させ、ローテーション投手として大成することを期待したいですね。(2016年10月)

実際に投げている姿を見たことは短いクリップ動画以外にないのですが、これだけ各ランキングで評価されるとどうしても期待してしまいます。ドミニカ共和国出身のプロスペクトはマイナーの階段を上がっていく途中で期待を裏切ることも多いのですが、Lopezはホンモノと信じています。(2015年3月)

[2016年12月最終更新, 2015年5月更新、2014年4月オリジナル]

このシリーズの通算第11回、2014年の第1弾は、2013年11月のBAプロスペクトランキングで1位、全体でも21位と高く評価されたLucas Giolitoです。

[Player Data]
Name: Lucas Giolito
Position: RHP
Born: July 14, 1994
Birthplace: Santa Monica, California
School: Harvard-Westlake HS (California)
Height: 6-6
Weight: 225
Bats: Right
Throws: Right
Draft: 2012-1(16) WAS
Acquired: Draft
BA Organization Rank: 2(2013)⇒1(2014)  ⇒1(2015) ⇒1(2016)
BA Overall Rank: 67(2013)⇒21(2014)  ⇒7(2015) ⇒5(2016)

[Scouting Report]
197センチの長身という体格を活かした100マイルに達する速球が最大の武器。スリークォーター気味に腕が出てくるが、それが微妙な変化を生み出し一層打ちづらくしている。大きく割れるカーブも高校時代から高く評価されてきた。2013年シーズンには80マイル台半ばのチェンジアップを習得。これらを組み合わせてイニング数を上回る三振を奪っている。また、2013年の与四球率3.4と、コントロールも良い。投球フォームも安定しており、既にかなり完成されている印象。Roy HalladayやJohn Smolzと比較する向きもあるほどの逸材とされる。

(Photo by Carl Kline)


[Background]
2012年の春先までは、高校生ナンバー1、あるいは全体1位指名を予想するスカウトがいたほどの逸材。しかし、右ヒジの痛みで2012年シーズンはほとんど投げられず、ドラフトが近付くに連れて評価を下げ、ドラフトの直前のBAランキングでは9位となっていた。当日はさらにナショナルズの指名順の16位までスリップ。ちなみに、同ドラフトでパドレスに全体7位指名されて入団したMax Fried投手は高校のチームメイト。UCLAへのコミットメントもあり入団交渉は難航したが、期限ぎりぎりに合意に至った。

2012年8月14日にGCLでデビューし2イニングを投げたが、懸念されていた右ヒジ痛が再発。同23日にTJ手術を受けてシーズン終了。

リハビリを経て2013年7月3日にGCLで復帰。少しずつ投球数を増やし、最長5イニングを投げられるようになったところで、Auburn(SS)に昇格して3試合に登板。両チームで計11試合、36回2/3を投げ、1.96/1.15、39奪三振、14四球という抜群の成績。球速も回復し、プロスペクトとしての評価を急上昇させた。

2014年シーズンはSSでの開幕を予想する向きが多かった中で、あえてHagerstown(A)で4月から登板。初戦こそ(寒い気候もあり)3回3失点だったが、以降は安定した投球を続け、8月中旬に投球回数制限(計97イニング)に達してシーズン終了となるまでに計20試合に先発し、2.20/1.00、110奪三振、28四球と終わってみれば圧倒的な数字を残した。7月にはオールスター前座のFutures Gameに選出。その前後には2度のリーグ週間MVPを受賞し、シーズン終了後にはリーグ最優秀投手賞も受賞。何より、TJ手術からの回復は全く順調に推移。元々高かった評価を更に高め、あらゆるプロスペクトランキングで全体トップ10入りを果たした。

2015年は開幕からしばらくフロリダで過ごした後、5月に入ってPotomac(A+)で開幕。初戦は打ち込まれたものの、2戦目は6回1失点11奪三振と快投。6月から7月にかけての6試合30イニングでは、自責点3(防御率0.95)、35奪三振と打者を圧倒。再びFutures Gameに出場した直後にHarrisburg(AA)に昇格。AAでも最初の2試合で打たれたが、8月14日の試合では7イニングを1安打1四球11奪三振の無失点に抑え、週間MVPを受賞。シーズン終了までにAAで13試合に先発して2.71/1.22の好成績で、MLB全体でも5本の指に入るエリートプロスペクトと評価されるに至った。

2016年はメジャーのスプリングトレーニングに参加した後、開幕はHarrisburg(AA)。またもやや出遅れたが、エンジンさえかかればAAの打者など相手ではないと言わんばかりの投球。6月10日に7回無失点12奪三振の快投を見せると、(AAAを飛ばし)6月28日のメッツ戦でメジャーデビュー。この試合、4回まで1安打無失点ピッチングだったが雨のため無念の降板。以降はメジャーとSyracuse(AAA)を行ったり来たりしながら投げ、AAAっでは最終的に7試合37回1/3で40奪三振、2.17/1.10としっかり抑えたが、メジャーでは出れば打たれるを繰り返した。メジャーでの成績は21回1/3で6.75/1.78。結局初白星を記録することはなかった。内容も、速球は90マイル台前半にとどまり、カウントを作ることはできても決め球に欠け、11奪三振に対して12与四球。夏にはMLB全体でも1,2を争うプロスペクトとしての評価を得ていたが、シーズン終了時には大きく評価を下げることになった。

2016年12月7日、Reynaldo Lopez、Dane DunningとともにAdam Eatonとのトレードでホワイトソックスに移籍して、退団することになった。

[Comment]
2016年夏に最高値を付けたプロスペクトとしての評価が大きく下落したこのタイミングでのトレードはすんなりと納得できないものがありますが、メジャーでのあのピッチングを見せられてがっかりした身としては、やむを得ないかなとも思います。ともかく、再建モードのホワイトソックスであれば早々にメジャーのローテーションで投げる機会を与えられることでしょう。マイナーでのように、最初しばらく苦しんでもいずれはしっかり支配的な投手になれるよう、頑張ってください。(2016年12月)

期待通り、全体トップ10に入るトッププロスペクトに成長。今季はおそらくPotomacで過ごすことになると思いますが、しっかりと投球回数を積み上げて来春のスプリングトレーニングに呼ばれることを期待。ほぼ同じように扱われているReynaldo Lopezといい感じで競い合って一緒にステップアップしてくれればと思います。(2015年5月)

Stephen Strasburgの次の世代のエース候補として大きな期待を持って見ています。くれぐれも無理はせず、しっかり投げて、来年のプロスペクトランキングで全体トップ10に入るような飛躍を期待しています。(2014年4月)

Danny Espinosaがエンゼルスへトレードされました。

先に結論を言ってしまえば、「やや残念だけれどこれでよかった」と思います。

2008年のドラフト3順目入団。2008年の2月に私がブログを始めて最初にあったドラフトでした。同期組の中では、Tom Mione(10順目)、Tyler Moore(16順目)、Steve Lombardozzi(19順目)がナショナルズでメジャーに到達しましたが、とうとう最後の1人の退団となりました。そういう意味でも、今回のトレードは感慨深いですね。

せっかくなので、山あり谷ありのEspinosaのキャリアを振り返っておきます。

メジャー昇格までは順調そのものでした。ドラフト後、New York Penn League(SS)できっちり結果を残し、翌2009年には早くもPotomac(A+)で開幕。ここでも結果を残し、Futures Game、リーグ・オールスターに選出され、そしてアリゾナ秋季リーグでも大活躍。Harrisburg(AA)で開幕した2010年も前半戦でAAの投手を打ちこみ、リーグ・オールスター、2年連続のFutures Game出場の後、Syracuse(AAA)へ昇格。そして、セプテンバーコールアップでメジャーに昇格し、メジャーデビューを果たしました。実質2年目でのスピード出世。しかもいきなり月間6本塁打(打率は2割ちょっとでしたが)。足もあり、パワーもあり、そしてショートの守備力は抜群とあって、そのオフのBAのランキングでは全体66位という高い評価を受けました。そして2011年はセカンドのレギュラーとして158試合に出場し、21本塁打。公式の新人王投票でも得票するほどの活躍。デビューが1年早かったため(Espinosaをセカンドに押しのけて)ショートを守っていたIan Desmondが特に守備面で安定しないため、Espinosaこそが将来のナショナルズのショートストップであるべきだと言われた時期でした。

しかし、結果的には、2015年シーズン終了後にDesmondがFA退団するまで、ショートの座を奪うことはできませんでした(Desmondが故障中は守りましたが)。

チームが初の地区優勝を達成した2012年にはチーム最多の160試合に出場して貢献したものの、ナ・リーグ最多の189三振を喫し、課題も浮き彫りになりました。そしてEspinosaにとっては悪夢のようなシーズンとなったのが翌2013年。2012年9月に守備で痛めた左肩の影響もあって、開幕から打撃絶不調。さらに死球で右腕も痛めたということで、6月にDL入り。回復後も、セカンドのポジションはルーキーのAnthony Rendonに奪われてしまったため、AAAでシーズンを終えることになりました。なお、この時にマイナーへのオプションを行使されたため、FA権の取得が1年遅れることになっています(ずっとメジャーに在籍していれば今オフFA退団していたはずでした)。この頃にもトレードの噂が出ていましたが、2014年は控え内野手扱いで開幕メジャー。チーム内の故障でセカンドを中心に100試合以上に出場しましたが、とにかく打てず。優勝争いをしていたシーズン終盤は結局ベンチを温めていました。2015年は、スプリングトレーニングで右打ちに専念することも試みたり(開幕後はスイッチヒッターに戻った)、ファーストやレフトまで守るスーパーユーティリティ性を発揮してみたりして、打撃成績も多少改善させ、何とかチーム内での居場所を確保していました。

そして今季、Desmondが退団したことでようやく廻ってきたショートのレギュラーとしての出場。守備はもちろん素晴らしかった。エラーの数は多かったものの、それで守備力を判断する時代ではありません。またバットでも前半戦はよく打ち、AAAで結果を残していたTrea Turnerをブロックする形になるほどでした。しかし、シーズンが進むに連れて打撃は下降線を描き、7月以降の成績は.186/.276/.312、308打席で107三振という悲惨な数字でした。キャリアハイの24本塁打を放ちましたが、3打席に1度は三振では・・・。それでも守備力を買って最後まで使ってもらいましたが、ポストシーズンでも18打席でわずか2安打、8三振。成長著しいTurnerと比較すると、来季のレギュラーの座は危うい状況でシーズンを終えていました。

Danny Espinosa (2010-2016: 7 Seasons: for Nationals)
779G 2972PA 598H 92HR 285RBI .226/.302/.388 60SB

出場試合数はナショナルズ歴代3位、セカンドでの先発491試合はぶっちぎりの1位。安打数や本塁打数など多くの積み上げ系の成績では、歴代5位前後に位置しているものが多いですね。そんな中、目立つのは「死球王」ぶり。2016年にも自己最多の20個をもらい、通算73個。2位の2倍以上の数字です。

そして、先日のAdam Eatonのトレード獲得により、来季はTurnerがショートにコンバートされることが明らかとなり、チーム内での立場をなくしていた矢先にトレードが決まりました。

足掛け(マイナーも含めて)9シーズンに渡った長いナショナルズでのキャリアの終わり方としてはやや残念な形ではありますが、Espinosa本人にとってもチームにとっても、これでよかったと思います。

エンゼルスで大いに活躍し、来オフ、堂々とFA市場に参戦してくることを心から願っています。

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交換相手はAustin AdamsとKyle McGowinという2人の25歳の右腕投手。2人ともメジャー経験はありませんが、近いうちにメジャーデビューする可能性は十分というレベルの投手。

Austin Adams (2016 for Arkansas(AA) of LAA)
32G 41.1IP 2HR 24BB 61K 3.05/1.28

Adamsは2012年のドラフト8順目。入団当初からブルペン投手として育成され、昨シーズン(2015年)途中にAA、さらにシーズン終了間際にAAAに昇格するまでは着実にステップアップ。今季は再びAAで開幕し、AAAに昇格してもいいような成績を残しましたが、7月にDL入りしたこともあり、AAでシーズンを終えています。上記のAAでの成績では、特にイニング数の約1.5倍という極めて高い奪三振率が目を引きます。

奪三振率の高さはプロ入り後ずっと維持しています。最大の武器はエンゼルス傘下のプロスペクトの中でも最高という評価を受けているスライダー。これに93マイル程度の速球とチェンジアップを交えて三振の山を築いてきました。課題は制球力。今季はかなり改善したとはいえ、それでも9イニングあたり5.2は多過ぎ。この点さえ向上すればセットアッパーも務まると言われています。

11月、ルール5ドラフトを前に40人ロースター入りを果たしており、当然、ナショナルズでも40人ロースター選手として来春のスプリングトレーニングに参加します。開幕はAAA(クローザー?)と予想されますが、展開によっては意外に早くメジャーデビューするかもしれません。

Kyle McGowin (2016 for Salt Lake(AA) of LAA)
22G(22GS)  116.1IP 46BB 98K 6.11/1.63

McGowinは2013年のドラフト5順目。プロ入り後は一貫して先発として投げています。Adamsよりも速いスピードでマイナーを昇格し、今季はAAAでも投げました。が、結果は伴っていません。球速は90マイルちょっと程度で、変化球も特筆すべきものはなく、コントロールも決して良いわけではない。被本塁打も多い。こうしてみると良いところはほとんどないようにも見えますが、Salt Lakeは圧倒的に打者有利とされるPacific Coast League所属なので多少は割り引いでもいいかもしれません。長身で潜在能力は高いという元々の評価に期待しましょうか。

まだルール5の対象となっておらず、40人ロースターには入っていません。

[2016年11月更新, 2015年9月更新, 2014年6月オリジナル]

全体第16回はドミニカ出身のRafael Bautista外野手です。

[Player Data]
Name: Rafael Bautista
Position: OF
Born: March 8, 1993
Birthplace: Santo Domingo, Dominican Republic
School: NA
Height: 6-2
Weight: 165
Bats: Right
Throws: Right
Draft: NA
Acquired: International FA (2012)
BA Organization Rank: 25(2014) ⇒21(2015) ⇒13(2016)
BA Overall Rank: NA

[Scouting Report]
何といってもスピードが魅力のセンターフィールダー。2012年と2013年の盗塁数は計73個で、盗塁成功率も84%と高い数字を誇っている。守備でも俊足を活かした守備範囲の広さと、打球への反応の良さで高く評価されている(肩はまずまずといったところ)。打撃はコンパクトなスイングで当てにいくタイプで、2年間でわずかに1本塁打と長打力には欠ける。と、ここまではAAAにいるEury Perezとかぶるが、大きな違いは右打者であることと、それなりに四球を選べること。長打力がついてくれば、レギュラーとしてやっていける可能性もある。

[Background]
契約して初年度の2012年シーズンは地元ドミニカ共和国でプレー。打率、出塁率、盗塁数でチームトップの好成績を残し、早々と米本土上陸を勝ち取る。2013年はGCLナショナルズ(Rk)に所属し、.322/.400/.391の好成績。26盗塁でリーグ盗塁王を獲得。守備でもシーズン通じて1エラーと評価を上げ、シーズン終了後のGCLオールスターに選ばれた。

2014年はHagerstown(A)で開幕。シーズン序盤は下位を打っていたが、打撃、走塁ともに好調で、リードオフとして起用されることが多くなった。6月にSouth Atlantic Leagueのオールスターにも選出されると、そのままフルシーズン出場し、最終的には.290/.341/.382、5本塁打、そしてリーグ独走の69盗塁を記録。ポストシーズのオールスターにも選出され、プロスペクトとしての評価を上げ、BAでは組織内21位とそこまでではなかったが、BPではなんと9位にランクされた(ただし、Trea TurnerとJoe Rossの獲得前)。

メジャーのスプリングトレーニングにも招待されるなど、大きな期待感を持って迎えた2015年シーズンだったが、Potomac(A+)で迎えた開幕直後に足を故障。リハビリを経て復帰してきたときには既に7月末。そこからシーズン終了までは.289/.326/.350とまずまず打ったが、足踏みのシーズンとなってしまった。

2016年はHarrisburg(AA)でセンターのレギュラーとして136試合に出場し、.281/.344/.341の堅実な打撃成績に加え、全マイナーリーガーで最多となる56盗塁を記録。着実に評価を高め、11月には40人ロースター入りを果たした。ドミニカ共和国でのウィンターリーグにも参加してしっかり打っている。

[Comment]
(私の予想が嬉しいほうに外れ)初挑戦となったAAでしっかりと評価を上げ、ついに40人ロースター入りを果たしました。最大の売りである足を活かしたプレーを続けていれば、メジャーへの声がかかる日は遠くないでしょう。(2016年11月)

失われたシーズンとなりそうでしたが、なんとか踏みとどまったという印象。打撃だけでなく、持ち味の足も最後の44試合で22盗塁とペースを戻しており、期待感は残しています。来季はもう一度A+をやり直しかな。(2015年9月)

ドミニカ共和国出身選手の評価はなかなか難しいのですが、これまでの成績を見ている限り、Eury Perezのグレードアップ版に見えます。スピードを失うことなく、しっかりと打てるようになれば、メジャーへの道も開かれてくるはず。(2014年6月)

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